1960年代後半から現在に至るまで、独自のビジョンを持って映画を作り続けているアメリカの知られざる名匠チャールズ・バーネット。一貫してアメリカ黒人の経験を描いてきたバーネットは、黒人の独立系映画作家が自分たちの物語を語るための道を拓いた先駆者の一人である。センセーショナリズムやステレオタイプ、ジャンルの慣習を拒否し、人種や階級に対する鋭い観察眼と巧みなストーリーテリングを用いて、黒人の人間性を映し出してきた。その革新的な作品は批評家から高く評価されており、ベルリン国際映画祭をはじめ国内外の映画祭で数々の賞を受賞している。
アメリカが生んだ偉大な映画監督の一人とみなされているにもかかわらず、長い間バーネットは映画史に埋もれた存在だった。日本ではマーチン・スコセッシ制作総指揮によるブルースに関するTVドキュメンタリー集の一編が特別上映されたのみである。 しかし近年、MoMAやルーヴル美術館で回顧展が開催されるなど、世界的に再評価の機運が高まっている。バリー・ジェンキンス、ディー・リース、エイヴァ・デュヴァーネイ、故チャドウィック・ボーズマン、デヴィッド・ゴードン・グリーン、リン・ラムジー、モス・デフ、アジズ・アンサリなど、多くのアーティストがバーネットの作品から影響やインスピレーションを受けたことを公言している。
チャールズ・バーネット監督に焦点を当てた日本初の上映となる「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション」では、自主上映グループ After School Cinema Club が、バーネットの監督作を順次紹介する。